01-09;心臓血圧 起立性調節障害
- 小児の機能性雑音;1)4LSB〜心尖部で収縮期にLevineI〜II度の楽音様雑音(ギターのG線を弾いたようなブーンという音。2)肺動脈弁領域(2LSB)で収縮期駆出性雑音。3)静脈コマ音(左右頸部〜鎖骨下に座位で聴取し、臥位では消失)
解剖
胎児動脈管
- 胎児動脈管が閉鎖すると、胎児右室ー>動脈管ー>下行大動脈の血流が断たれ、胎児右心不全から胎児水腫、新生児遷延性肺高血圧(PPHN)に至る。
- チアノーゼだからといって、安易に胎児に高濃度酸素投与をすると、肺動脈閉鎖症であれば死亡する(プロスタグランジンE1投与)。
聴診
静脈性コマ音(venous hum)
- 頸部より鎖骨上窩、心基部に聴取。頸をねじったり臥位にすると雑音が減弱したり消失したりする。
II音
- 呼気時に単一になるか、20msec以下の分裂となる。
不整脈
呼吸性不整脈
- 吸気時に早く、呼気時に遅くなる。
- 吸気時に胸腔内圧陰性化ー>静脈血還流量の増加ー>迷走神経反射の抑制、肺表面の伸展効果ー>交感神経の刺激 で心拍数の増加
心室性期外収縮
- 児童生徒の0.5%前後の頻度
- 成人と異なり基礎心疾患を有することはほぼなく、運動制限や薬物療法はほぼ不要。
- 運動制限が必要な例;多形性、運動負荷中後に数が増加する場合、2連発以上、RonT、期外収縮後にST-T変化を伴う場合
- したがって期外収縮を見たら運動負荷心電図は必要。1年ごとに悪化しないことを確認。
WPW症候群
- 器質的心疾患の除外は必要。(心筋症での合併は0.5〜3%。その他にも先天性心疾患で)
- 発作性上室性頻拍の危険;運動誘発がないかどうか
- 非顕在性WPW症候群に心房細動(偽性心室頻拍)が合併し突然死することがある。
先天性心疾患
- チアノーゼは還元ヘモグロビン値が5g/dl以上の際にみられる。
肺動脈弁狭窄
- 軽症例では生涯無症状である。中等度の例では、学童期以後に運動時呼吸促迫など心不全症状さらに進むと不整脈が出てくる。
- 乳児期に大きな心雑音があるのに、元気で発育良好、体重増加良好なのは肺動脈狭窄症の特徴である。、
ASD(心房中隔欠損症)
- 右心の容量負荷が増大し、三尖弁を通る血流が増大しそのため相対的な三尖弁狭窄状態となり、低調な拡張期ランブルを呈する。
- 聴取音ではII音固定性分裂と、相対的PS(第2肋間胸骨左縁)が重要。
- 乳児期では聴かれず、幼稚園、小学校の健診で初めて発見されることが多い。(しばしば学校検診の心電図 不完全右脚ブロックで発見される)
- 乳幼児期にはほとんど症状もなく雑音も弱い。幼児期や学童期に発見されることが多く、30〜40歳代以降に心不全症状が出現する。成人での先天性心疾患の約45%を占め、女性に多い。
- 自然閉鎖は稀。軽症(シャント率30%以下)では無治療。就学期前後か発見後可及的早期に欠損部の直接縫合かパッチ閉鎖術、またはカテーテル治療を行う。
- 左第2弓の突出(左肺動脈幹)。左第4弓膨隆突出(右室肥大)。右第2弓突出(右房)
- 心電図の軸偏位;二次孔型ASDでは正常または右軸偏位。一次孔型のECDでは左軸偏位およびPQ時間の延長(一度房室ブロック)
- ASDでの左ー>右シャントは緩やかで、ジェット血流ではないので心内膜は傷つきにくく、感染性心内膜炎のリスクは低い。
- 20歳以下ではほとんどないが、20歳以降より肺高血圧がみられはじめ、50歳以上では半分以上に見られる。
- ASDでは部分肺静脈環流異常(PAPVR)、僧帽弁逸脱症候群(MVP)を合併しやすい。
- カテーテルによる治療(Amplatzer)が日本でも2006年から可能に(1600例以上施行)。
VSD(心室中隔欠損症)
- 自然閉鎖が20〜50%に認められる(3〜6歳)。
- 感染性心内膜炎の合併は、扁桃腺摘出や抜歯時には注意。
- 漏斗部(高位欠損);日本に多い。自然閉鎖は稀。ARの合併あり(右冠尖が落ち込む)。雑音最強点は胸骨左縁第2肋間。漏斗部心室中隔欠損+大動脈弁尖逸脱では欠損孔の上縁を右冠尖が覆うため、見かけの孔は小さくなり、短絡量は少ない。VSDを完全に覆うほどまでに逸脱した例では、肺体血流比=1.1程度のことがしばしば。一般にVSDの手術適応に関しては、肺体血流量比2.0以上。1.5から2.0は症状に応じて手術を考える。1.5以下は不要となっているが、右冠尖逸脱を伴う漏斗部VSDでは、肺体血流量比のみで手術適応を決定してはいけない。
- 膜様部;最多。自然閉鎖が多い。雑音最強点は胸骨左縁第4肋間。
- 流入部;心内膜床欠損型。Down症候群に多い。
- 筋性部
- 大きな欠損であれば心不全を伴い、体重増加が悪くなる。
学校生活指導
- 心不全症状なければ運動制限は必要なし。菌血症の原因となり得る治療を行う際は、感染性心内膜炎の予防のために抗菌薬の予防投与が推奨されている(海外では小さなVSDでは不要との見解もある)。
ECD/AVSD
- かつては心内膜床欠損症(ECD)と呼ばれていたが、現在は房室中隔欠損症(AVSD)と呼ばれることが多い。
- Down症候群に合併しやすい。
- goose neck sign;左室造影で左室流出路が細長い(cleft(僧帽弁前尖の裂け目)が左室流出路に翻転するため、細長く見える)
総肺静脈環流異常症(TAPVR)
- すべての肺静脈が右心系に還流。肺静脈が上大静脈に還流するI型、右房に還流するII型、下大静脈、門脈系に還流するIII型、これらが混在するIV型に分類。全先天性心疾患の約1%。
- I型では、無名静脈、垂直静脈、上大静脈、右房の拡大によりsnow-man型の心陰影
肺動脈狭窄(PS)
- 全先天性心疾患のうち約10%。最も多いのは肺動脈弁狭窄症。
- 右室から肺動脈への圧較差が40〜50mmHg以上あれば治療の適応となる。
- PTPV(経皮的バルーン肺動脈弁形成術が第一選択
Fallot四徴(TOF)
- 胎生期に漏斗部中隔の前方偏位。1)肺動脈狭窄、2)心室中隔欠損、3)大動脈騎乗、4)右室肥大
- 治療;1)姑息手術;肺血流量増加ないし肺血管を太くすることを目的にBlalock-Taussig手術(ブレロックトウシク)(鎖骨下動脈ー肺動脈短絡術) 2)根治手術;VSDの閉鎖+右室流出路形成術。一般的には2〜3歳で行われる。(手術の成否は末梢肺血管床の発育に依存し、中隔欠損閉鎖後に増加した右室拍手量を受け止められるかどうかで決まる)
- 木靴心(左第2弓の陥没、左第4弓の突出)
- 新生児期にっはチアノーゼは出現しにくい。原則的には心不全にならない。
- 肺動脈狭窄部は漏斗部狭窄(漏斗部中隔が狭窄に関与)なので、最強点は胸骨左縁第3肋間である(PSなら第2肋間)。VSDは巨大であり、右室圧=左室圧となるのでVSDによる雑音は生じない。
- 長期生存では肺動脈閉鎖不全による心室頻拍での突然死例が注目されている。現在、右室起源の心室性不整脈が増加してきた場合には、Rastelli型人工導管による再手術が行われる症例が増えてきている。
- 多血症による脳血栓、脳膿瘍、感染性心内膜炎、無酸素発作などが死亡原因となりやすい。
- β受容体遮断薬は、漏斗部真菌の過剰収縮を抑制して発作を阻止する。
- 無酸素発作の原因;酸素需要の増大(啼泣、哺乳後)、体血管抵抗の低下(入浴、麻酔)、循環血流量の減少(脱水)、貧血
- Fallot極型=肺動脈閉鎖では酸素投与は禁忌で、生後からプロスタグランジン持続点滴
- 15%に22番染色体q11.2の微細欠失を認める。その場合、心奇形(cardiac defects)、特異的顔貌(abonormal face)、胸腺低形成(thymus
hypoplasia)、口蓋裂(cleft palate)、副甲状腺機能低下に伴う低カルシウム血症(hypocalcemia)を伴いCATCH
22と呼ばれる。
動脈管開存(PDA)
- 超低出生体重児では、出生直後、まず呼吸窮迫症候群が問題となり、肺サーファクタント補充療法を必要とする。すると肺の状態が改善され、今度は動脈管を介して肺へ流れ込む血流が増加する。短絡量が多いと肺出血を合併したり、超や腎臓への血流が低下し、壊死性腸炎や尿量低下を来す。
- VSD、PDAは出生直後では全く心雑音を聴取せず、数日してから発見されることが多い。
三尖弁閉鎖症(TA)
- タイプがいくつかある。Ib型であれば肺血流減少と右ー>左シャント
- Fontan手術;肺循環に心室からの血流の駆出が関与しないため、機能的根治術といわれ、いくつかの術式がある。
起立性調節障害(OD)
診断
- 甲状腺、副腎、貧血、心臓機能異常(心筋症、肺高血圧)、副鼻腔炎を除外。
- 失神がある時は上記に加え脳腫瘍、てんかん、不整脈なども検索
- 起立試験で脈圧が16mmHg以上低下。拡張期血圧低下は目立たないかしない。起立時に収縮期血圧が20mmHg以上低下する。
- 脈拍は1分間に35以上増加。
- 起立直後性低血圧;起立直後の低血圧の後、元の血圧への回復に25秒以上要する。
- 遷延性起立性低血圧;起立直後の血圧や心拍数は正常であるが、起立後3〜10分後で収縮期血圧が20mmHg(または15%)以上低下。
- 体位性頻脈症候群;起立中の血圧低下は認めないが、心拍数が115/分以上(または心拍数が35以上)増加。
- 神経調節性失神;起立直後に血圧低下と意識消失発作。
川崎病
先天性風疹症候群
- 心疾患としては、動脈管開存、末梢肺動脈狭窄、心房中隔欠損の頻度が高い。
- 風疹の25〜50%は不顕性感染である。